2007年4月1日

高山千利教授が琉球大学に着任しました。

ご挨拶

分子解剖学講座 教授 高山千利

ご挨拶
分子解剖学講座のホームページへようこそ!
 琉球大学医学部解剖学第二分野は2010年4月から大学院化に伴い大学院医学研究科分子解剖学講座と名称が変わりました。現在大学院生を含めて総勢12名が研究室に在籍しています。 
 当講座は、医学部の教育では、組織学、神経解剖学、発生学を担当しています。これまで、3年掛けて組織学実習室設備の更新とe-learningの導入、2つの教育環境の整備を進めました。その結果、学生の自学自習が十分にできるレベルに達したと考えております。大学院医学研究科の教育では、修士課程の人体構造実習、神経解剖学特論、博士課程の組織化学特論を開講しています。希望者には、基礎的な形態学的解析法の実習を行い、さらに、WebClassを介して、基本的な形態学的解析法を公開しています。
 研究面では、GABA伝達に関する形態学的解析を中心に進めております。GABAシグナルの発生変化に加えて、GABA伝達の再生機構と可塑性保持への関与、様々な病態におけるGABAシグナルの変化の解析を行い、神経系にひろがるGABAの世界を解明したいと考えております。

 教育環境の整備
1.e-learningの導入  自学自主が可能になりました。
 琉球大学の総合情報処理センターが導入しているe-learningプログラムWebClassを研究室のホームページとリンクさせ、活用しています。WebClassは、履修登録した学生が各自のIDとpasswordによって閲覧するシステムになっており、閲覧履歴も追跡できるので、セキュリティーが確保されています。このシステム内で、講義・実習の配付資料、スライドファイル、練習問題、定期試験問題とその解答、過去10年間の解剖学に関連する医師国家試験の問題を公開し、予習、復習、学習達成度の自己チェックに活用してもらっています。加えて、試験結果の開示、個人的な質問、要望の受付も行っています。

2.組織実習室の整備 組織学実習のインフラ整備を行いました。
1)実習顕微鏡の更新
 組織学実習室に配備されている120台の実習顕微鏡を全て更新しました。さらに、実習時間外に気軽に実習の補完ができるように、人体解剖学・分子解剖学共通の資料室に自習用の顕微鏡を設置しました。
2)プロジェクター、スクリーン、モニターなどの更新
 情報技術(IT)の時代に対応すべく、講義用のデスクトップパソコン、それに対応したプロジェクター、高画質テレビモニター(6台)、スクリーンを設置または更新し、効率よい講義・実習が行えるようにました。さらに、無線LANの設置を行い、将来的にはノートパソコンをテーブルにおいての実習を可能にする予定です。


3.組織標本の更新
 実習標本の劣化(破損・褪色など)が著しく、学生実習に支障を来す状態でした。形態学の学習に「心眼」は明らかに不適切です。そこで、死体解剖保存法を遵守しながら、「琉球大学でいご会」との協力で、肉眼解剖実習に供される献体を用いて、組織標本の補完を行っています

4.自宅での模擬実習
e-learningの一つとして、本年度後半より、組織切片の画像ファイル(バーチャルスライド)のネット配信を開始する予定です。現在、そのシステムの構築を進めています。WebClass内の説明文章とバーチャルスライドファイルをリンクさせるので、ネット環境に有る場所なら、自宅でも、合宿先でも、顕微鏡実習と同等の学習が可能になります。CBT、医師国家試験いずれも、画像の理解度をチェックする問題が多く、学生の成績向上につながると期待しています

平成19年度 琉球大学 若手研究者支援研究費 高山千利

プロジェクト:琉球大学研究プロジェクト支援事業 若手研究者支援研究費
研究課題: 神経系の発生に関与する新規分子の探索
期間  :  平成19年度~平成20年度
申請者 :  高山千利

2007年4月 琉球大学平成19年度中期計画達成プロジェクト

プロジェクト:平成19年度中期計画実現推進経費実施報告書(中間)
事業名  : 分子形態学的手法によるGABAシグナルの発達変化の解析―精神・神経疾患の病態解明に向けて
期間: 平成19年4月~平成22年3月(3年間)
プロジェクト担当者:高山千利, 栗原一茂, 大倉信彦

1 高山千利 研究テーマ

GABA・グリシンの機能発現機序に関する分子形態学的研究

 脳は、運動、感覚受容、記憶と学習、情動行動など動物のすべての活動をコントロールしている。内部には、無数の神経細胞が複雑な回路が形成され、様々な分子が働いている。この無数の機能分子の中で、神経伝達物質GABAγ-アミノ酪酸)とグリシンに注目して、大学院生とともに3種類の研究を行っている。
 1つ目は、GABAとグリシンによる神経伝達の発生過程(Shimizu et al. 2022)。現在は、グリシン伝達の発生をメインに研究している。2つめは、GABAとグリシンは興奮性/抑制性、2つの顔を持ち、その機能の変化は様々な神経疾患と関連することが知られている。その中で、神経損傷後に生じる慢性疼痛(神経障害性疼痛)に注目して研究し、GABAの抑制性低下が関連することを示した(Kosaka et al.2020)。現在、その上流にあるミクログリアの活性化を抑えることにより慢性疼痛を軽減する研究に挑戦している。3つ目は、GABAとグリシンの興奮性作用に関する研究である。当講座では、GABA/グリシンの機能を興奮性にシフトさせることにより、軸索損傷後の再生を加速することを見出した(Ando et al. 2024)。現在は、この仕組みを利用して中枢神経損傷後の再生に挑戦している。