1 高山千利 研究テーマ

GABA・グリシンの機能発現機序に関する分子形態学的研究

 脳は、運動、感覚受容、記憶と学習、情動行動など動物のすべての活動をコントロールしている。内部には、無数の神経細胞が複雑な回路が形成され、様々な分子が働いている。この無数の機能分子の中で、神経伝達物質GABAγ-アミノ酪酸)とグリシンに注目して、大学院生とともに3種類の研究を行っている。
 1つ目は、GABAとグリシンによる神経伝達の発生過程(Shimizu et al. 2022)。現在は、グリシン伝達の発生をメインに研究している。2つめは、GABAとグリシンは興奮性/抑制性、2つの顔を持ち、その機能の変化は様々な神経疾患と関連することが知られている。その中で、神経損傷後に生じる慢性疼痛(神経障害性疼痛)に注目して研究し、GABAの抑制性低下が関連することを示した(Kosaka et al.2020)。現在、その上流にあるミクログリアの活性化を抑えることにより慢性疼痛を軽減する研究に挑戦している。3つ目は、GABAとグリシンの興奮性作用に関する研究である。当講座では、GABA/グリシンの機能を興奮性にシフトさせることにより、軸索損傷後の再生を加速することを見出した(Ando et al. 2024)。現在は、この仕組みを利用して中枢神経損傷後の再生に挑戦している。