大倉信彦研究テーマ

・受精しない異形精子の機能に関する研究
 一般に動物の精子は生まれる子供の数よりもはるかに多く造られるので,精子には、卵と受精する極少数の精子と,受精しないその他大勢の精子とが存在する。体内受精種におけるその他大勢の精子は,単なる過剰生産の結果なのか,それとも何らかの役割を持つadaptive non-fertilizing spermなのかで議論が分かれている。  巻き貝類の多くの種では,雄の精巣において形態の異なる二種類の精子(二型精子と呼ばれる)、すなわち、受精する正形精子と受精しない異形精子とを造ることが知られている。二型精子は雌性生殖道の中でも見分けることが可能であり、受精しない異形精子の役割を調べるための様々な実験が可能である。この様な異形精子の機能を調べることによって,受精しないその他大勢の精子の役割の一端が明らかにできると考え研究を進めている。 雌性生殖道における二型精子の識別が特に容易な、淡水性巻き貝カワニナを用いて、交尾後の二型精子の経時的な動態を把握することを当面の目標とし、今年は、その目標達成の準備として、個体識別標識を付けた個体の飼育法と交尾を確認するための行動記録法を確立した。

この水槽で撮影したGIF動画
 1.夜行性(夜間に行動が活発になる様子)→ yakousei.gif へのリンク
 2.餌の魅力→ esa.gif へのリンク
 3.交尾行動(個体番号10♀)→ koubi.gif へのリンク
両生類胚の神経組織分化における同質誘導現象
 現在様々な組織分化・器官形成に関する誘導現象が調べられているが, 研究の主流は異なった組織間での相互作用であり同一細胞集団内での細胞分化に関しての研究は少ない。両生類胚神経組織分化において脊索の誘導作用によって神経化された細胞が隣接する未誘導の細胞を神経化するという現象は神経系形成における同質誘導と定義される。この現象は組織分化・器官形成を理解するうえで重要と考えられるが最近までこれに関する研究は少なくこの1,2年でその存在が確実視されるようになった。今後この現象を細胞レベルで調査したいと思っている。